211号(201504) リストに戻る

ピケティ旋風と日本の格差

 4月1日はエイプリルフール( April Fool's Day )で、私の小さい頃は直訳の"四月馬鹿"といわれ、他人を驚かせて愉快がっていました。毎年4月1日には、害のない嘘をついてもよいとされ、イギリス等では1日の正午まで許されて、正午を越えたら嘘だった事をバラすという風習があるそうです。しかし、昨今のニュースで伝えられる出来事には、"ウッソ〜!?"と驚いてしまいそうなものが多く、一日限りのこの伝統習慣も特に必要でない気がしてきました。(事実は小説や嘘より奇なり!?)

 さて、「経済格差の論客」として知られるフランスの経済学者、トマ・ピケティ氏が先頃(1月末)来日し、各地での講演会も大盛況で、"ピケティ旋風"を巻き起こし日本を離れました。同氏の著書『21世紀の資本』は、資本主義経済における「格差」の拡大について論じる学術書ですが、日本でも13万部以上が売れるなど、世界中で話題になっているのです。日本より先にブレークした米国では、国民の支持を失いかけているオバマ政権と民主党及びそれを支持するリベラル層が、ピケティの主張を政治的に利用している背景がある、ともいわれています。同様に、日本でも「アベノミクス」批判・反安倍の攻撃材料の根拠として歪曲されながら、(特に労働団体や革新的な野党勢力を中心に)注目されている事情があるようです。同書は「経済格差」について、過去300年分のデータをもとに「資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す」と論じ、100年以上も前のマルクス『資本論』で、労働者からの「搾取」は持続せず、資本主義は必ず終焉すると論じたように、21世紀の資本主義諸国の格差拡大傾向に警鐘の意味を込めて、著書のタイトルを『21世紀の資本』と決めたといわれます。 ...ストックである資本がフローである国民所得の何倍かを示す資本所得比に着目し、これを格差の原点と解しているのです。つまり、株式や不動産収入等によって得られる利益が労働(働き)によって得られる利益を上回ることで格差が生じ、"金持ちは益々金持ちになり"、労働の対価で所得を得ている人々との格差は、益々大きくなると指摘します。但し、最新のデータの分析から、例えば各国の年収上位1%の人々の年収が国民全体の年収に占める割合(これも「格差」の大きさの基準とした場合)、日本は9%と主要48ヶ国中2番目に低く、最も大きい米国の17.5%と比べ格差が少ないと論じているのです。
 ちなみに、企業のCEO(最高経営責任者)の平均報酬と労働者の平均賃金に対する比率を見ても、米国が354で世界一格差が大きく、日本は最低レベルの67という数字もあります。このようなデータを見る限り、「日本にとって大事なのは格差の是正ではなく、景気回復だ」とのピケティ氏の持論は的を得ており、「格差問題でピケティ氏から現政権にお灸を据えてもらおう!」と意図した(一部の)マスコミ等にとっては、いささか期待外れの旋風だったのではないでしょうか。

公認会計士 黒 沼  憲


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