213号(201506) リストに戻る

帳簿の世界史

 先月の後半から、各地の小学校では春の大運動会が開かれていました。郡部の学校、都市部の学校を問わず、何処からも"なまり"のない司会役のかわいい声や、応援団幹部の元気なシュプレヒコールが拡声器を通して聞こえてきます。今では、選手一人に応援の取巻きも少なくて4名(両親・祖父母)が標準タイプなのだそうです。競技の方も"全員入賞"、そして"ピクニックのように楽しい昼食タイム"が小学校の運動会の典型パターンとなったようです。
デュークエイセスが歌う「日本の歌シリーズ・おさななじみ」の歌詞"♪ 小学校の運動会 ♪ 君は一等僕はびり ♪ 泣きたい気持ちでゴール・イン ♪ そのまま家まで駆けたっけ"のようなセピア色の昔の運動会は、今や遠くになりにけりです...。
 さて、新聞広告の新書案内で「帳簿の世界史」(文芸春秋刊)が目にとまり、早速購読してみました。「権力とは財布を握っていることである」とのアメリカ建国の父の一人で財務長官も歴任したアレクサンダー・ハミルトンの言葉が副題扱いにされたジェイコブ・ソール(南カリフォルニア大学教授。歴史学と会計学が専門)の翻訳本であり、"歴史の裏にはすべて、帳簿を駆使する会計士たちがいた""これまでの歴史家たちが見逃してきた「帳簿の世界史」を、会計と歴史のプロフェッショナルが紐解く"と評されては、この道の専門家のはしくれとしては無視でず、一気読みしてしまいました。(昨今、テレビドラマでも"国税捜査官もの"が茶の間の人気でもありますが、)これまで歴史本の中で会計士の存在は、(専門家たちの間でのみ扱われ、)ほとんど表に出てくることはありませんでした。そんな影の男たちの力を、国家、名家、企業の興亡に重ね合わせながら、面白く読ませてもらえる本でした。"なぜスペイン帝国は栄え、没落したのか。""なぜフランス革命は起きたのか。""なぜアメリカ独立は成功したのか。""なぜ日本は急速に列強へ追いつくことができたのか。"その歴史の裏には全て、帳簿を駆使する会計士たちの存在があった。また、オランダが東インド会社を中心とした世界貿易で富を得たきっかけは、複式簿記を取り入れたことにあると言われ、フランス革命は、ルイ十六世から財務長官に任命された銀行家・ネッケルがそれまで隠されてきた国家財政を開示し、国民の怒りを買ったことで引き起こされたと書かれてありました。700年におよぶ財務会計の歴史を振り返れば、会計は事業や国家や帝国の礎(いしずえ)となるものであり、企業の経営者や国の指導者が現状を把握し、対策を立てるのに役立つ。そうでなければ、破綻に拍車をかけることになる。 "一国の浮沈のカギを握るのは政治の責任と誠実な会計""よい会計慣行が政府の基盤を安定させ、商業と社会を活性化するのに対し、不透明な会計とそれに伴う責任の欠如が金融の混乱、金融犯罪、社会不安を招いてきたことは、何度となく歴史が証明している。
 このように歴史的に考察された会計士の役割に触れることができ、幸運と感じながらも、身が引き締まる思いもいたしました。

公認会計士 黒 沼  憲


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