233号(201702) リストに戻る

トランプ大統領は交渉術のプロ!?

 上梓されて間もない遠藤周作の「沈黙」(17世紀の日本の史実・歴史文書に基づいて創作した歴史小説)は、それまで本を読む習慣のなかった私が、兄から薦められ手にした記念すべき一冊でした。その「沈黙」が、巨匠マーティン・スコセッシ監督により映画化された「沈黙 サイレンス」は世界的にも評判(本年度アカデミー賞有力候補)となっています。江戸時代初期のキリシタン弾圧の渦中に置かれたポルトガル人の司祭を通じて、神と信仰の意義を命題に描いたこの原作は、世界中で13か国語に翻訳され、戦後日本文学の代表作として高く評価されるものです。県内の封切館でも上映中の先日、山形新聞の文化欄に「映画「沈黙」を見て」と題した山根道公ノートルダム清心女子大教授の寄稿がありました。
 不寛容に向かう時代の潮流を象徴するトランプ米大統領の就任演説が朝のニュースで流れた日に、映画「沈黙 サイレンス」の封切が重なったことに、重い意味を感じる。…トランプ大統領は聖書に手を置いて宣誓し、演説でも旧約聖書の「詩編」の一節を引用して神の民の団結を促し、過激なイスラムのテロを根絶することを語った。…「沈黙」も不寛容な時代の物語だ。江戸幕府がキリスト教を危険視し、信徒を根絶しようと弾圧し、多くの血が流れた。そうした日本に宣教師ロドリゴは潜入し、日本人信徒の苦悩と悲惨を目の当たりにする。…神はなぜ黙っているのかと問い続ける中で、…信徒の一人に裏切られて役人に捕まる。…心の痛みの極みで、踏絵のキリストのまなざしが、踏むがいい、おまえの痛みを私が一番よく知っている、その痛さを分かつため十字架を背負ったのだ、と訴える声を聞き、ロドリゴは踏絵に足をかける。…キリスト者が信仰の土台とすべき新約聖書でイエスは、旧約聖書にある「目には目を」の報復を否定する。敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい、天の父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、雨を降らせてくださるのだからと、愛と寛容を教える。…ここまで深く人間の魂の領域に触れた物語を追体験すると、人の心はおのずと寛容に向かうのではないか。「沈黙」を執筆していた遠藤は「俺は人間が裁けなくなった」と語っていたという。その言葉が今、思い起こされる。…
 さて、「ありえない」とも言われた異端児トランプ氏が第45代米国大統領に就任して間がないのに、早速の"仰天の"大統領令の連発に、世界中が振り回されているようです。「米国第一(アメリカ・ファースト)主義」を掲げ、これまでの政治や社会の常識や慣行を次々に否定して、そこに生まれる社会的・国際的混乱の中に、自らの権力基盤を強化し、米国の地位向上を図る手法=トランプ大統領お得意のディール(取引)が始まった感がいたします。そんな中で、氏の傍若無人ぶりを諭すかのような世界のリーダーたちの声明も出始めています。安倍首相に先駆けて直接会談して盟友宣言をしたはずの英国メイ首相でさえ、「難民や移民の入国制限令」は言語道断と手厳しく非難しました。間もなく始まる安倍トランプ会談、先の国会答弁のごとき「米国の内政事項であり、コメントは控えたい」と歯切れの悪い答弁は「沈黙」の何物でもありません!
本音と建前がしっかりしていれば世界の尊敬も得られるはずです。毅然とした姿勢で会談に臨んでほしいと切に願っています。

公認会計士 黒 沼  憲


リストに戻る

黒沼共同会計事務所 HOMEへ
© Kuronuma Accounting Office Tax Co. 2015 All rights reserved. プライバシーポリシー
免責事項・著作権
− 税理士法人 黒沼共同会計事務所 −
〒990-0047 山形市旅篭町3-1-4 食糧会館3F
山形掃除に学ぶ会