239号(201708) リストに戻る

M&Aの成否

 日産自動車 ・ルノー・三菱自動車 の3社連合が、2017年上半期(1-6月)の累計販売台数で初めて世界販売トップに立ったとのニュースは驚きでした。 昨年の年間首位だったフォルクスワーゲン(VW・アウディ・ポルシェ連合)は2位に落ち、トヨタは、グループ世界販売(日野自動車・ダイハツ工業 を含む)は前年同期比2.7%増の512万9000台で過去最高を更新したが、3位にとどまったとのこと。 ルノーの最高経営責任者(CEO)で、日産、三菱自の会長であるカルロス・ゴーン氏は記者会見で、今後も提携を拡大して販売増を図り、顧客に次世代モビリティーサービスを提供することで、「潜在能力を最大限に発揮することができるだろう」と述べ、年間世界首位にも意欲を示していました。ゴーン氏の大胆な買収戦略(M&A)で、"世界のトヨタ"と"欧州の巨人フォルクスワーゲン"を一気に抜き去り、世界の頂点まで上り詰めたということのようです。
 こんなゴーン流の国際的買収戦略と比べ、日本の大企業の海外M&A(合併・買収)の失敗事例がセンセーショナルに話題となっています。とりわけ、日本郵政は2015年に買収したオーストラリアの物流会社の業績不振のため、17年3月期の連結決算で約4000億円の損失を計上したり、東芝は06年に買収した米原発会社ウェスチングハウス(WH)の経営破綻による損失額が9500億円に上り、経営危機に陥っていることはご承知の通りです。親会社の企業価値を高める目的でM&Aを行ったはずですが、共通する失敗要因も上げられています。それは、いずれも焦って買収したことです。日本郵政は、IPO(新規株式上場)を行うにあたり、国内市場だけでは成長が望めないため、海外市場に成長を求めたものでした。経営状態を十分確認せずに、自分たちでこの会社を経営できるのかという見込みもないまま進んでしまったようです。東芝にあっても、当時原子力業界で大きな存在だったWHを、当時の予想価格の倍の6200億円という高額買収でした。この買収で競合していた三菱重工に勝ち、原子力の世界で自社の地位を確固たるものにしたいという焦りが判断を誤らせたようです。さらに、ゴーン流のM&Aと違って、買収後の統合がうまく進められなかったことが上げられています。例えば、日本郵政には国際物流企業の経営ノウハウはなく、十分なコントロールができずに赤字に陥ったと言われています。東芝の場合も、両社の持っている原発の技術が異なるためWHをコントロールできず、経営はブラックボックス状態で、巨額の簿外損失につながったのでした。
 ところで、国内においても近年これまで見られなかった理由でM&A(合併・買収)が再び増加しつつあるようです。戦後日本の高度成長期に起業した経営者たちが高齢になったにも関わらず、後継者がいないという現実です。社員を守るためにも、廃業は避けたいと願う経営者がほとんどで、老舗家業の中小企業でも真剣に検討されています。つまり、M&Aによる事業承継によって後継者問題を解決するケースが増えてきているのです。また、高齢化社会とデフレの長期化によって日本国内の市場規模が全体的に縮小している状況から、積極的な海外展開のためにM&Aを行っています。これらの要因が絡み合い、M&A増加の背景となっていると言われます。

公認会計士 黒 沼  憲


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