165号(201106) リストに戻る

記録小説(戦艦武蔵・三陸海岸大津波)

 東日本大震災発生の3月11日を前後にして、私たちの生活パターンや価値観においても変化が見られるようです。
 近年、都市化や長寿化が進み、「命をおびやかすリスク」の存在に鈍感になり、"日本ほど安全な国はない"と錯覚していた嫌いがあったようです。しかし、今回の福島第一原発事故による「放射能被ばく」という現実は、まさに青天の霹靂(へきれき)、日本全国が大騒ぎしています。医療専門家(東大病院/中川恵一准教授)によれば、(公表されている事故レベルによる)被ばくでは、日本人のがん死亡率が最大1%程度上昇する程度だということです。(そもそも、がんのリスクを下げるには、「がん検診」+「がんを避ける生活習慣」がポイントだそうで、早期発見の検診を受け、タバコを吸わない、お酒もほどほどにして適度な運動に心がけていれば、放射線とは比べものにならないリスクの回避が図られるといわれる。)ただ、喫煙や飲酒などは、「自ら選択するリスク」であるのに対して、今回の放射線被ばく騒動は「降ってわいたリスク」という点で大きな違いがあり、私たちが「リスクに満ちた限りある時間」を生きていることに気づかせてくれたといえましょう。
 話は変わりますが、以前、吉村昭著「戦艦武蔵」を読んだ際に、同じ記録小説ジャンルの同氏の作品の中に「三陸海岸大津波」があることは知っていましたが、この度の大震災を機に、改めて購読してみました。
 歴史小説家の同氏が得意とする地道な資料整理、現地調査、関係者のインタビューで、緻密なノンフィクション小説(記録小説とも呼ばれる)で、「戦艦武蔵」同様の史実と証言の徹底的な取材と検証、調査を基にした力作で、震撼(しんかん)の書と評されてきたものでした。
青森・岩手・宮城の三県に渡る三陸海岸は、明治29年、昭和8年、そして昭和35年の三度も大津波に襲われ、人々に悲劇をもたらしたが、大津波はどのようにやってきたか、生死を分けたのはなんだったのか…、多くの体験者の証言をもとに再現し、この書から多くを学んだはずでしたが、またしても平成23年3月11日、更に威力を増して襲来したのでした。ちなみに、明治29年の時は、岩手県の被害が最も甚だしく、死者は実に2万2,565名、これは岩手県南の海岸に住む人のほとんどが、死亡又は負傷したことになります。(宮城県の死者3,452名、青森県343名)
 ところで、先に読んだ「戦艦武蔵」は、日本帝国海軍の夢と野望を賭けた不沈の戦艦「武蔵」の極秘の建造から壮絶な終焉までを克明に綴り、壮大な劇の全貌を明らかにした同氏の記録文学の大作です。同一の設計図をもとに、呉海軍工廠(国営企業)で造られたのがおなじみの戦艦「大和」、片や長崎市三菱造船所(民間企業)で一般市民や海外諜報員(スパイ・外交官?)の目を潜り抜け、ようやく完成にこぎつけたのが戦艦「武蔵」だったのです。

 さて、この二つの歴史小説から、@歴史は必ず繰り返される("備えあれば憂いなし")、Aいつに変わらず日本の技術水準(ハード)の高さに反して運用(ソフト)の拙劣さ、を痛感せずにはおれません。大震災後の日本・日本人は、大きく変わった!と後世に残せるように、世界一の技術大国の総力を挙げて、震災地復興を成し遂げなければなりません。そのためにも、"経済は一流、政治は三流"から脱却して、"政治も一流!"と国際的にも評価されるような新生日本と、ふさわしいリーダーが待望されるところであります。

平成23年6月10日
公認会計士 黒沼 憲


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