105号(200606) リストに戻る

時代の寵児か、あだ花か

 村上ファンドの村上世彰代表は、遂に東京地検特捜部に逮捕されてしまった。
 ここ数日間の新聞やテレビの報道内容の影響もあり、彼の名声は一気に地に落ちた感がする。化けの皮が剥がされたように、「改革者」から「乗っ取り屋」へと、逮捕を境に時代の寵児の評価は一変した。
 大分前のことだが、私の知人が奇しくも意味深に話してくれた「古今東西、マスコミを敵に回しては勝ち目が無い。ましてや、堀江氏や村上氏が買占めに走った銘柄が放送会社であったわけで、メディアを押さえている者と喧嘩してしまったら、反動は物凄く、恐ろしい結果になる…」との顛末予想が現実のものとなった。
 それにしても、「村上ファンド劇場」もその終盤は、阪神タイガースファンまでも敵に回す構図となってしまっては、大方「勝負あり!」の状況であった。確かに、村上氏が注目され始めたころの一貫した理念は、株主にとっての「企業価値の向上」であり、増配や株価の向上策を会社に要求した。景気も株価も低迷するなか、未活用の土地や資金を抱え株価の安い企業の株を買い入れ、「もの言う株主」として利益を吐き出させる手法は、周囲に鮮やかに映った。
 そんな村上氏の日本企業の経営規律を高めることに大いに寄与した「功」よりも、証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で逮捕されるに至った「罪」だけが後味として残り、単なる「乗っ取り屋」と酷評されてしまったのである。
 ところで、私が村上氏の言動に疑念を持ち始めたのは、耐震強度偽装事件でずさんな検査ぶりが露呈した民間の指定確認検査機関「イーホームズ」(藤田社長は逮捕され、会社は「指定」が取り消され廃業してしまった。)の未公開株式に、村上ファンドが投資したとのニュースであった。同ファンドの投資先としてふさわしい相手だったのか…。
 「日本を良くする」と高邁な理念から程遠い、利益最優先の何でもありの行動には、当時も違和感を覚えたものである。
 高い投資利回りに引き寄せられて海外の年金基金などから大量の資金が流入したため、大企業の株の多数を握り、資産売却などを実現させたうえで、巨額のリターンを得る手法が必要になっただろうし、顧客の期待とプレッシャーから「インサイダー取引」の誘惑を自制することが出来なかったのだろう。
 結局、有能な村上氏は、「時代の寵児」から「時代のあだ花」へと転落したのだった。

平成18年6月10日
公認会計士 黒 沼  憲


リストに戻る

黒沼共同会計事務所 HOMEへ
© Kuronuma Accounting Office Tax Co. 2015 All rights reserved. プライバシーポリシー
免責事項・著作権
− 税理士法人 黒沼共同会計事務所 −
〒990-0047 山形市旅篭町3-1-4 食糧会館3F
山形掃除に学ぶ会