188号(201305) リストに戻る

本屋大賞(書店員が最も薦める)海賊と呼ばれた男

 4月9日に発表された第10回本屋大賞(新刊書を扱う全国の書店員が、最も客に薦めたいと思う小説を投票で選ぶ文学賞)に、百田尚樹著『海賊とよばれた男』が選ばれた。
 "読むと熱く語りたくなる"という口コミで広がり、この受賞作は現在120万部を突破する売行きだそうです。
 私の場合は、"意気に感ずる"ことでは人後に落ちない梅村昭博さん(上場企業「名糖産業」の創業者のご子息で、「日本を美しくする会」世話人・岐阜県在住)が大量に購入された中からのいただき物で読ませてもらいました。『海賊とよばれた男』は、出光興産の創業者・出光佐三をモデルとした長編小説。(上巻380ページ、下巻362ページの大作)国岡鐡造という、日露戦争や関東大震災、世界恐慌、第二次世界大戦、オイルショックなど激動の時代に、国際石油メジャーに対抗した男の95年の生涯を描いています。
 「社員は家族」、「非上場」、「出勤簿は不要」、「定年制度は不要」、「労働組合は不要」――そんな五つの社是を掲げる「大家族主義」こそが、数々の困難を打ち破ってきた「国岡商店」の強さだった。 敗戦で何もかもを失い、大手石油会社から排斥され、石油屋なのに売る油がない。しかし齢60歳の国岡は「日本は必ずや再び立ち上がる。日本の偉大なる国民性を信じ、再建の道を進もうではないか!」と教訓を示し、社員一人たりとも馘首(かくしゅ=首切り)しようとしなかった。国岡が「息子たち」と呼ぶ国岡商店の社員らも、糊口のための慣れない漁業や真空管式ラジオの修理への従事も辞さず、ついに採算度外視で旧海軍のタンクの底に残った油の処理を請負うことで、石油業界にし復帰を果たし、たくましく会社を再生させてゆく。
(「仕事がない時代」であり、「食べさせてくれている会社」への恩返し、という気持ちもあるのでしょうが、今の時代との「働くことへのモチベーション」の違いには、驚かされるばかりです…!)
 物語のハイライトは、石油を国有化し英国と抗争中であったイランのペルシャ湾へ、自社の大型タンカーを極秘裏に差し向かわせた「日章丸事件」。世界を牛耳る石油メジャーや英国といった巨大な圧力を相手に、物怖じせず交渉をとりまとめるのです。同船は、ガソリン、軽油約2万2千キロ?を満載し、大勢の人の歓迎を受けて川崎港に帰港しました。(英国は積荷の所有権を主張し、東京地裁に提訴するも取下げ。)敗戦で自信を喪失していた当時の日本で、国際社会に一矢報いた「快挙」として受け止められたのです。奇跡や運の良さという言葉で片づけられることではなく、国岡の説く「人間尊重」の哲学を誠心に貫いた姿勢の賜物といえましょう。
 「日本にこのような血のたぎる男がいたのかと思うと身震いする」「国岡鐡造の熱い生涯に心打たれた」「日本中の大人の人が主人公の鐡造みたいな人間だったら、日本も変わるんじゃないかなと本気で思った」「日本人が自信を無くしている今こそ読むべき」など、選考に当たる書店員や多くの読者が、主人公の生きざまに強く感銘したようです。
 作者自身も、「バブル崩壊にリーマン・ショック、そして東日本大震災と今の日本は自信を失っている。でも、俺たちは68年前の敗戦から立ち上がった人々の子であり、孫だ。必ず立ち直るという思いで書きました。読み終えてああよかった、明日も頑張ろうと思ってもらいたい」と語っています。
 私も、「どこの会社のガソリンも同じようなものだろう」と考えていましたが、これを読んだら、出光のスタンドが急に気になりだしました。

平成25年5月10日
公認会計士 黒 沼  憲


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